お母さん猫の愛

去年の秋のことでした。ある女性から相談のメールが入りました。毎日ご飯を食べにきている野良猫が子供を産んで、その子供を女性の家に連れてきていると。

行ってみると外に置いてある洗濯機の下から2匹の子猫が顔を出していました。お母さん猫はほとんど仲間の猫と一緒に別の餌やりさんのところにいるらしいとか。別の餌やりさんとは、この家の付近で野良猫にただ餌をやっておられる高齢者。不妊手術は全くと言っていいほど手をつけておられませんでした。その別の餌やりさんのお宅の近くに行くと、おそらく餌も足りていないのか、風邪をひいて鼻水をたらした子や結膜炎で目が塞がりかけた猫がたくさんいました。

一方、相談者の家の外の洗濯機の下にいた子猫2匹は、お母さん猫が安全な場所を探して隠していたのだと思います。捕獲器においしいご飯を入れてセットしたら間も無く2匹とも入ってくれました。

こちらは先に保護された2匹の写真です。目が炎症で塞がりかけています。

この2匹の子猫たちもかなりの猫風邪で、外耳炎、眼瞼炎も酷く、またノミが無数に生息していて貧血も重かったのです。それにもまして、この2匹を保護した2日後に相談者の女性の元へお母さん猫が連れてきた子猫は、ほとんどひとりで歩けないほど弱っていて、目の前で女性が箱に入れて保護してもお母さん猫は静かに見ているだけだったそうです。おそらくこの女性に助けてほしいと瀕死の我が子を託しにきたのだと思われます。

子猫3匹の治療はそれはそれは大変でした。毎日耳の中の消毒や膿の吸い取り、目の消毒。最後に保護した瀕死の子に至っては獣医さんに「今夜持つかどうか・・・」まで言われた程。先生も必死に頑張って治療して下さいましたし、この子達も痛くて怖い治療を鳴き叫びながらも耐えてくれました。そして3匹揃って無事に大きく育ち、それぞれ温かい家庭に家族として迎えられました。今はそれぞれの家庭で家猫として大切に可愛がられ幸せにしています。

こちらは元気になりつつある2匹の写真(上)と奇跡的に一命を取り留めた後の1匹の写真(下)です。

この子達を守ったのは紛れもなく、お母さん猫の英断でした。元気な2匹を優しくて安全な相談者さんのお宅に隠して、お乳をやるときだけ通ってきていたそうです。そして最後の1匹もこのままでは助からないかもしれないと悟り、相談者さんに託したお母さん。我が子を手放す気持ちはいかほどだったかと思うと泣けてきます。それでもこのお母さん猫の勇気と英断がこの子たちを幸せへと導いたのです。

子猫たちを保護した後、お母さん猫の不妊手術をするために捕獲器に入ってもらいました。その時のお母さん猫の写真です。妊娠出産子育てで自分の身をすり減らして生きていました。背骨が突き出てガリガリでした。

私はこの時のお母さん猫の痩せこけた姿が目に焼き付いて、なぜ保護しなかったのかと悔やんでばかりいました。しかし、私たちの本当にしなければならない活動はTNR活動であり、全ての猫さんを保護して助けることはできないし、今後も活動を続けていくためには自分の力の限界を認識しておかなければなりません。辛い決断ですがこれが現実です。

つい先日、相談者さんのお宅を尋ねたらなんとお母さん猫がたまたま姿を現してくれました。その姿は子育て当時とは打って変わり、ふっくらとした体つきになって表情も穏やかでした。食べたご飯も今は全て自分のための栄養として体に取り込めている証拠です。人馴れはしていないものの、私が差し出したパウチやカリカリをペロリと平げゆったりと去って行きました。

お母さん、子供たちはみんなとても幸せになりましたよ。安心して下さいねと伝えました。あなたは本当に賢くて強いお母さんでしたね。どうかこの地で今後は自分の身を守ることだけに専念して、長生きして下さいね。また、会いに来るのでその時もこうして姿を見せて下さいね。

野良猫のお母さんは、年に3回前後の妊娠を繰り返します。妊娠、出産、子育てを繰り返す一生です。自分の食べるものがなくても子供にはお乳をやります。離乳してもしばらくは食べ物を与えます。自分が病気でも頑張ります。常に摂取した栄養は胎児や子供たちに与え、自分の体は二の次です。そして子供たちをたくさんの危険から守らなくてはなりません。事故や怪我や病気、カラスやイタチや狸などの天敵など、無事に大きくなれる子は一握りです。だから生み続けます。そりゃあ短命になりますよね。だから私たちはTNR(野良猫の不妊手術)を頑張ります。これ以上可哀想な命が生まれないように、そして過酷な猫生のお母さん猫が少しでも減りますように・・・(タカハタ )

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